急がれる地下鉄・地下街の防災対策。民営化ですすむのか?
地下空間への浸水は市内全域
大阪市内には地下街・各鉄道駅への無数の出入口が存在しています。津波や集中豪雨で多くの利用者がいる地下空間が浸水されれば、人命に関わる深刻な被害につながります。専門家からは「マグニチュード9・0級の地震が起きた場合、大阪市内は上町台地を除くほぼ全域が水没する恐れがある」と警告されています。地下街は快適さとともに大きな潜在的な危険性を持っており、その対策は重要な課題です。
地下空間の浸水予防対策
地下街の浸水被害で最も心配されるのは、照明・空調設備への被害です。地下街や隣接するビルの照明・空調をコントロールする電気室などの設備は、地下2階や地下3階に置かれているケースが多く、地下街への浸水は、照明機能を喪失させ、真っ暗になった地下空間のパニック状態を引き起こすことになります。大阪市防災会議でも、「電源設備等が浸水しないように地上及び高所への移設、主要設備の耐水化、予備電源の確保等に努める」ことが指摘されています。しかし、これを行うためには高額な費用負担が生じます。大阪市はそのための費用の負担・補助を検討すべきでしょう。
浸水防止も人の技術が大切
地下出入口の浸水防止施設として止水パネル・止水板があります。電動式の止水パネル・止水板はごく一部で、ほとんどが手動です。しかし、重量があるため一人での設置作業は困難で、隙間が空かないように設置するためには日頃からの設置訓練が必要です。現状では地下街や地下階を有するビルの関係者の間で訓練がほとんど行われていません。大阪市が当事者まかせにせず、防災への指導・援助を行うことが必要です。
安全と被害軽減のために
市内の主要な地下街である設備機器の点検・保守管理・監視にあたる技術社員は経営難を理由に人員削減の対象となり、ほとんど委託管理されています。設備機器の点検・保守管理・監視は通常時であれば問題は少ないのでしょうが、浸水や火災などの非常時には熟知した技術者でなければ対応ができません。地下街の管理には、専門的な知識・技能・経験のある技術者の確保が大切です。地下街を知り尽くした警備員も必要となります。地下街を管理する会社のリストラは、地下街を危険なものにします。
地下鉄の民営化で安全は?
市営地下鉄でも、浸水時の利用者の避難誘導、避難完了後の防水扉・防水パネル等を設置しなければなりません。そのための職員の確保や、止水設備の増設・改善も必要です。
毎年、100億円以上の黒字を出す市営地下鉄がその費用を負担することは難しくありません。ところが大阪市は市営地下鉄の民営化方針を打ち出しています。民営化されれば営業利益を追求せざるを得ません。市民を避難誘導し防水扉・防水パネルを設置するための職員確保が、地下鉄の民営化によって拡充されるのか、きわめて疑問です。
急がれる地下鉄・地下街の防災対策。民営化ですすむのか?
【 大阪市労組 第417号-2013年1月28日号より 】
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