生活保護の実施体制を充実させてこそ適正化は可能です 生活保護引き下げは、社会保障改悪の第一歩
昨年8月からはじまった生活保護基準の引き下げによって、今後3年間で平均6・5%(最大10%)総額670億円の生活保護予算が削減されます。
人気お笑い芸人の母親が生活保護を利用(違法性はない)していたことがセンセーショナルに報道され、生活保護バッシングが一気に強まりました。その直後に民・自・公の3党が「税と社会保障一体改革」の合意を結び、社会保障制度改革推進法を成立させ、社会保障制度改悪の第一歩として生活保護法の「改正」が強行されたのです。
他人ごとではない!生活保護基準の引き下げ
生活保護基準は社会保障制度の土台となるものです。厚生労働省の資料によれば、住民税の非課税、就学援助制度、国民年金の免除、医療保険の高額療養費の所得区分、介護保険の段階区分、保育料免除の階層区分、自治体の単独事業などの基準や基礎年金、地域別最低賃金の水準などに影響を与えることが示されています。
生活保護基準の引き下げが、憲法25条にもとづく文化的な最低生活の保障を切り崩し、社会保障改悪や働くものの賃金改悪に大きく結びついていることは明らかです。その結果、購買力の低下で地域経済を悪化させることにつながります。
生活保護の増加は社会保障の貧困とセーフティネットの崩壊が原因
生活保護利用者の急増は、景気の悪化とともに、労働法制の相次ぐ改悪による不安定雇用の増大、雇用保険の改悪、年金削減、医療費や介護保険の負担増など社会保障の改悪、さらに貧困な住宅政策などセーフティネットの崩壊が原因です。最低生活にも満たない基礎年金額で暮らす高齢者や失業した中高年層からの保護利用者が急増しています。貧困を拡大させているのは政治の責任なのです。
最低賃金や年金制度を改善することこそが求められているのに、貧困と格差を解消する世論の矛先を生活保護攻撃に向かわせている政治やマスコミのあり方が問われています。
生活保護職場の体制充実こそセーフティネットを支える力に
ケースワーカーは、生活保護の申請者・利用者の訴えに耳を傾け、人間的な信頼関係を基礎として支援と自立の方向を共に見出していくが求められています。そのためには、ケースワーカー自身の時間的・精神的な余裕と、組織としての対応、他機関との連携が不可欠です。
しかし、大阪市では、厚生労働省の監査で毎回改善を指導されているにもかかわらずケースワーカーの充足率は約6割、約500名も不足しています。高齢世帯( 60歳以上)担当は1人300世帯以上担当し日々の事務処理に追われており、一方、一般世帯担当は密度の濃いケースワークに追われ、保護の適正化どころか利用者に寄り添うこともできないまま、デスクワークに追われ全く余裕のない職場になっています。専門性や経験の蓄積がすすまず、現場での対応力も低下しているのが実態で、心身の疲れによる病気休職も顕在化しています。
こうした状態を解決するには社会福祉法にもとづく80ケースに1人のケースワーカー配置が必要です。また、専門性を高めるためにも臨時や任期付などの職員を雇い止めのない正規職員に任用すること、新任研修や専門知識を学べる研修の充実、専門職としの福祉職員の採用数の拡大が求められています。
橋下市長による職員への軍隊的統制の強化と生活保護行政の「適正化」問題
橋下市長が就任し、2012年2月に発表された「市政改革プラン・基本方針編案」に「生活保護制度など現代社会において機能不全を起こしている国の社会・行政システム」と明記し、それまでの大阪市の見解から踏み込み、最後のセーフティネットである生活保護制度そのものを「機能不全」だとしました。また、「ムダを徹底的に排除し、成果を意識した行財政運営」という目標の中に「生活保護の適正化」を位置づけました。
職員には「思想調査アンケート」「入れ墨アンケート」「喫煙への厳罰化」「分限処分による指導強化」など、職員を犯罪者予備軍とするような統制を強め、「市民に命令する立場になった」と訓辞しました。職場の統制強化が住民サービスの第一線職場にどのような影響を与えているのか検証が必要です。
このような中で、生活保護の「適正化」のとりくみによってすべての利用者を不正受給予備軍のように扱うことになるなら、ケースワーカーと利用者の信頼関係を破壊することにしかならず生活保護行政の本来の方向に逆行するものでしかありません。
私たちは、憲法で保障された生存権保障として生活保護制度の意味をしっかり押さえ、生活保護職場を充実させることが、地方自治体としての大阪市が取るべき方向だと確信しています。
みなさんのご意見をお寄せください
市労組は職員が市民のために役立つ、働きがいのもてる職場づくりのために頑張っています。みなさんの意見をお寄せください。
生活保護の実施体制を充実させてこそ適正化は可能です 生活保護引き下げは、社会保障改悪の第一歩
【 大阪市労組 第432号-2014年5月28日号より 】
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