自治体は今、何をすればいいのか?公共の役割を変質させる「自治体戦略2040構想」
少子・高齢化がすすんでいますが、今後も少子・高齢化によって日本の人口は1億人を切り、さらに7700万人ほどいる現役世代が、2040年には4000万人台になるという予測があります。
いわゆる2040年問題といわれている問題ですが、その対応をめぐって総務省は「自治体戦略2040構想研究会」を2017年10月に発足させて、論議しています。
自治体消滅論を前提にした公共サービスの「市場化」構想
昨年7月に総務省の「自治体戦略2040構想研究会」の第2次報告が出ました。同月発足した第32次地方制度調査会に出された諮問では、「人口減少が深刻化し高齢者人口がピークを迎える2040年頃から逆算し顕在化する諸課題に対応する観点から……地方行政体制のあり方について調査審議を求める」とされています。
「自治体戦略2040構想」( 以下、「構想」)は、2040年までに20歳から30歳代の女性が5割以上減少する自治体を、「消滅可能性都市」としてリストアップした「自治体消滅論」(2014年増田レポート)を前提としたものになっています。
自治体行政で公共サービスの産業化政策について、「市場化」をさらにおしすすめるとともに、公(保障)・共(生活)・私(生産)の効率的な行政体制を構築するとされていて、公共の役割が大きく変質させられる危険な内容となっています。
住民を主権者としてとらえていない
「構想」は、人口縮減時代に向けての枠組みの転換が必要だとして、新たな自治体行政の基本的考え方について、4つの項目(別掲)を示しています。
「構想」研究会には、地方自治体のメンバーは排除されています。人口減少分析の曖昧な増田レポートを前提に、総務省の前自治行政局長が自らの「地方統治構造」論をもとに、議論を主導しています。まるで戦前のように、「国」が「地方」を統治する機構につくりかえられようとしています。
「構想」は主権者としての住民の存在に対する根本的視点にかけ、住民自治、地方自治をないがしろにするものになっています。「国」に統治される「自治体」、行政を民間大企業の儲けの道具にさせないためにも、自治体労働者、自治体労働組合としての役割はますます重要になっています。
(別掲)
- 「スマート自治体への転換」
AI等を活用し従来の半分の職員でも自治体が本来担うべき機能できる仕組みをつくる。自治体行政の標準化・共通化をすすめ、自治体ごとの情報システムへの重複投資をやめる。 - 「公共私によるくらしの維持」
自治体をサービスプロバイダーから公・共・私が協力しあう場を設定するプラットフォーム・ビルダーに変える。つまり、自治体は共・私が必要な人材や財源を確保できるよう、支援や環境整備するだけの役割に機能縮小。 - 「圏域マネジメントと二層制の柔軟化」
行政のフルセット主義を脱却し、圏域単位での行政をスタンダードにする。つまり、それぞれの自治体がすべてを行うのではなく、政令市や中核市を中心に周辺自治体の圏域全体でのマネジメントをすすめる。 - 東京圏のプラットフォーム化
自治体は今、何をすればいいのか?公共の役割を変質させる「自治体戦略2040構想」
【 大阪市労組 第486号-2019年2月26日号より 】
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